歩ぞろいの手駒たち

手持ちの資源で日々やっていく。将棋ウォーズは初段。目指せアマ二段!

【将棋x海外】ホーチミンの夏

2016年夏、ローマでもなくミラノでもなくベネチアでもない、ベトナムホーチミン市に旅行に行ったのだった。
ホーチミンの夏の空気は東京のそれよりも格段に蒸し暑く、皮膚の内側に浸み込んでくるような独特の暑さだった。滞在したホテルから街の中心部に歩いていくと、バイクの台数がこれでもかと増えてきて、交差点ではバイクの流れが止むことがなく横断歩道を歩いて渡ることもできない。前夜にガイドから言われた「道路を渡るときはバイクを気にせずにゆっくり歩けば大丈夫ダヨ」というセリフを思い出していた。しかし、ぜんぜん大丈夫じゃない。足を前に進めようものなら、行き交うバイクとぶつかるだろう。

ローマでオードリー・ヘップバーンの乗るスクーターにぶつかるのだったらまだいい。ぶつかって怪我をして、オードリー・ヘップバーンにこう言われるのだ、「病院まで送っていくわ」。そして、グレゴリー・ペックばりに、優雅に二人乗りをしていく。


現実の世界では、夏にホーチミンの街中を散策するのは暑すぎて優雅からほど遠いのだが、それでも知らない土地を歩けば発見というものがある。
目抜き通りのドンコイ通りから、ベンタイン市場へと向かう途中、トンタットティエップ通りだっただろうか、通りを歩いていると、大人が向かい合って座り込んで何かしていた。

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どこかで見たことがあるような、ないような、、、あれは何だ?

 

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将棋だ! 正しくは「棋将(コー・トゥオン、あるいはカートン)」と呼ばれるベトナム将棋のようだ。表記が「将棋」と逆さまじゃないか。どことなく縁を感じる。


ビジネスマン風の人たちも昼休みにやっている。それ、お店のテーブルですよね!?

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少し離れたところでもやっている。どれどれ、東京将棋会館道場で1級、将棋ウォーズでも1級を低空飛行している私が形勢を判断して差し上げますよ。飛行技術としては低空飛行を続けるのはすごく難しいことだ、ということだけ覚えておいてくださいね。

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うーん、ええ、形勢はまったく分かりません。盤に描かれている斜めの線って何ですか??? それよりその将棋盤、渋すぎですから。弾力のある指し味、淡黄色の色つや、きめ細かく美しい木目、優れた耐久性という高級将棋盤の条件をすべて兼ね備えているといってもいいですよ、それ。

棋将(コー・トゥオン)のルールはともかく、道端で気軽に将棋が指せる文化、雰囲気っていいもんだ。日本でも昔は縁側で将棋していた人たちも多いのだろうが、最近は見かけなくなったかな(そもそも縁側があまりない…)。日本でも(表参道や白金は無理でも、まずは浅草のホッピー通りあたりから)街角で将棋が指せる雰囲気を作れたら、と感じたホーチミンの夏だった。