歩ぞろいの手駒たち

手持ちの資源で日々やっていく。将棋ウォーズは初段。目指せアマ二段!

【禁酒】会社帰りに一人でビールを飲む確率99.9%の夜、結果的に飲まなかったのでメモしておく

それは夏の暑さも和らぎ、街では長袖派の人が過半数を超えようとしていた日のことだった。会社を出てから「アルコールを飲む確率」が99.9%まで上がったが、結果的に飲まなかった。

いつも朝、会社に向かうときにこう思う、「今日は飲み会もないし、久しぶりにアルコールは抜きにしよう」と。この時点では飲む確率0%だと信じて疑っていない。そして、昼食時、13時ごろ。まだ「今日はアルコールは抜きにしよう」とおもっている。飲む確率0%だと信じて疑っていない。

そして日は傾く。16時ごろ、ふと思案すると「今日はどの店でビールを飲もう」に思考が変わっている。いつの間にか。そう、「アルコールを飲む確率」が99%に上がっているのである。そして、会社を出るとき、「アルコールを飲む確率」がさらに99.9%まで上がる。イチロー選手の守備率かと思わせる高い数値。

こんなことを15年ぐらい続けてきたように思う。ビールを飲まない日はほとんどない。ただ、その日は不思議なことに、結果的に飲まなかったのだ。夏の暑さが和らいだのが原因ではない。

その日、いつものように会社を出た。「今日はどの店でビールを飲もう」 と考えながら。ランチがボリューム満載のカツ定食だった。

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なので夜は軽くつまみながら飲めるところがいいな。あ、立ち食いの寿司屋に行こう。あそこは高くないし回転も速いからすぐに店に入れるだろう。そんなわけで、その立ち食いの寿司屋へ。店の前に先に一人並んでいた。最近はこの店は安くて旨い評判が立ったのか、混んでいる。なので一人しか並んでいないというのはどちらかといえばラッキーなことだ。迷いなく後ろに並んだ。この時点で「アルコールを飲む確率」は99.9%のまま。

事件いや事変はその時に起きた。時代の変曲点。店の中から店員が出てきて、待っていた二人(二人目は私)に水の入った紙コップを渡したのだった。えっと思ったが、お店は良かれと思ってそうしてくれたのだろう、「暑い中、待ってもらってありがとうございます」という意図で。そして水をもらえば飲んでしまうのが人間の性である、前に並んでいるひとも、そして私も水を飲んでしまった。

ああ、これから冷たい生ビールを飲むのに。そういう思いで水を飲んだら、体に急な変化が起こった。あるいは脳に変化が起こったのだろうか。体の奥からか、あるいは脳の奥からか言葉が聞こえてきた、、

「特にビール飲まなくてもいい…」

え、もう一度言ってくれ。

「特にビール飲まなくてもいい!」

本当か、自分よ。

席が空き、中に通された。職人に聞かれる。

「飲み物いかがしましょう?」

そして、小さいながらも体の奥から出る力強い声で答えた。

「お茶でお願いします」

そのようにして、ビールを飲む確率99.9%の夜、結果的に飲まなかったのだった。